07


とうとう出て来たか。

遊士は鯉口を切った刀をスラリと抜き放ち、二刀を構える。

風魔に刀を向ける小十郎の後ろで、政宗も六爪を抜いた。

「政宗、オレにやらせてくれないか?」

視線を風魔から外すことなく遊士が言えば政宗と小十郎は少し驚いた様だった。

「………OK」

彰吾が止めに入らないので小十郎も何も言わなかった。

「お二人は先に行って下さい。ここは遊士様と俺で片付けます」

黙っていた彰吾も遊士の言葉を肯定し、刀を中段に構える。

「任せたぜ遊士」

「無理はするなよ彰吾」

二人に一言残し、政宗と小十郎は先へ進む為に身を翻す。

その隙を逃すまいと風魔の手裏剣が迫ったが、遊士が間に飛び込んで刀で叩き落とした。

「アンタの相手はこのオレだ。政宗を倒したきゃオレを倒してからにするんだな。You see?」

ニィと笑って遊士は一瞬で距離を縮めた。

キィン、キィン、と打ち合う音が響く度、遊士のテンションも上がってくる。

相手にとって不足無し!

「Let's party!ってな」

ヒュンと振られた対刀が遊士の肌を浅く滑った。

ピリッとした痛みが右頬に走り、遊士は眉を寄せた。

「…っ」

軽快なフットワーク、息も吐かせぬ連続攻撃を二刀で受け止め、躱し、いなす。

両手が使えない遊士は風魔の鳩尾目掛けて右足を突き刺した。

「………!」

風魔が僅かに息を詰めたのが分かる。

飛び退き際、遊士の陣羽織を刀が掠め、端が斬れた。

「てめぇ!遊士様に傷を付けるとは良い度胸だ。俺が相手してやる」

「Wait!彰吾。コイツはオレの獲物だ」(待て)

ギラリと遊士の瞳が風魔を捉えたまま言う。

「ですが!!」

「オレが本当にヤバくなったら頼む」

フッと視界から消えた風魔の気配を探り、遊士は二刀を振るう。

左、右、後ろ、正面と襲い来る白刃と打ち合う。

時に足技を用いて、風魔の足を狩りに行く。

「チッ、そう簡単にいっちゃ愉しくねぇよな」

どうやら風魔もターゲットを遊士に定めた様で他には一切目を向けなかった。

彰吾は二人の戦いを視界の端に留めながら刀を振り下ろす。

「ぐはっ…」

ドサッ、と倒れ伏す足軽。恐れ戦き逃げる北条兵。

遊士様がそう言うのならば俺は貴女を信じる。

「誰にも遊士様の邪魔はさせねぇ」

信じて、貴女が思う存分戦える様この場は俺が守る。

彰吾が場を作ってくれているお陰で遊士は邪魔されることなく風魔との戦いに集中出来ていた。

「OK、OK.見えてきたぜ」

風魔の対刀と打ち合い、放たれた蹴りを避け、遊士は右の刀を振るう。

コイツの連続攻撃は受ければ確かにキツイが、切れ目がある。

攻撃するならそこを狙うしかねぇ。

確実に急所を狙ってくる攻撃を、二刀で防ぐ。

「……くっ」

防ぎきれなかった刃が防具を掠める。

風魔は一瞬遊士の視界から消え、連続攻撃の絞め、蹴り技に入った。

これさえかわせば―!

遊士は攻撃の入る寸前まで引き付け、かわす。

その際、風圧が肌を撫で、細かい切り傷を作ったが遊士は眉一つ動かさず攻撃に入った。

「Yeah-ha!」

雷撃を帯びた右の刀で風魔の胴を狙い、避けた所を左の刀で裂く。

浅く刀が入り、風魔の気配が揺れる。

「ちっ、浅いか…」

距離をとろうと、後ろに跳躍した風魔に向けて遊士は右の刀に溜めた雷撃を放つ。

溜めも少なく放たれた雷撃はHell Dragonより遥かに威力は劣るが風魔の動きを制限するには持ってこいだった。

畳み掛けるっ!

瞬時に距離を詰め、風魔に攻撃の隙を与えない。

右に左に、型通りであってそうでない、遊士独自の刀捌き、連撃、斬撃が風魔に襲いかかった。



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